昨年度刊行しました『樺太覚書』を題材にした民衆史研究会シンポの報告論文が刊行されました。

〈問う〉引揚者として工藤信彦先生に着目し、『樺太覚書』の主たる論点の一部を取り出し、引揚者自身の〈問い〉の意義について論じました。
目次は以下の通りです。

1 はじめに
2 〈問う〉引揚者
3 戦後の歴史研究における樺太の〈不問〉
4 〈開拓史観〉批判
5 領土としての樺太の脆弱性
6 日ソ戦争と日露戦争
7 おわりに

第6章第2節でとりあげた日露戦争時のサハリンの「十四歳の少年」への想像力というものは、歴史研究者にとっても刮目すべきものと思いますし、そうではない方々にもぜひ一読していただきたい内容です。

工藤信彦先生にお世話になってきた者としては、こうして工藤信彦先生を主題とした論文を書けたことはたいへんうれしいです。

機会を与えてくださった民衆史研究会のみなさんには感謝申し上げます。

また、『樺太覚書』の原稿をお書きになった工藤信彦先生はもちろん、寄稿にご協力をいただいたみなさま、刊行にご尽力いたいだた岩下明裕先生、翻刻の再開のきっかけを与えてくれた(当時)学生の小島優伽さん、多田亘輝さん、ありがとうございました。

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「境界地域を問い続ける引揚者:工藤信彦『樺太覚書』とサハリン島近現代史」
『民衆史研究』第105号、2023年05月20日、41-58頁。
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