東アジア環境史学会で、共同研究「帝国日本の林学者と植民地林業の研究」のパネルを組み私も報告をさせていただきました。

日本領樺太の森林資源開発関係者の中に、「植民者植民地主義」は見出されるのか、森林資源開発をどのように正当化していたのかということが主題です。

樺太庁の職員として林業にかかわっていた荒川真文と田畑司門治の事例を中心とした今回の研究で見えてきた点としては、林政関係者らや林業技術者らが①先住民族の権利には無関心であったこと、②日本は世界に誇る「森林国」であり日本民族は森林の持続的開発ができると考えていたこと、③持続的開発のためにも天然更新に頼るのではなく農業入殖と連動して造林を強化すべきと考えていたこと、④ロシア人は極東森林資源を放置しているから日本人が開発すべきであると考えていたこと、⑤戦後には樺太引揚者一般に「戦後植民者植民地主義」のようなものが見られたのに対して元・樺太林政・林学関係者にはそうした傾向が見られないこと、が挙げられます。

ただし、①については、既刊の拙稿でも言及しているように、1910年代末の北樺太調査においては先住民族の生業に対する「人道的」配慮の必要性を述べるものもあり、さらなる検証が要されます。

また、そもそも林政・林業関係者の発信自体が少ないため、今後はより多くの事例を集めて検証を重ねる必要があります。

コメンテーターである水野祥子先生からも有益な情報をいただき、農林連携については再度「農」の側からも検証しておく必要があることに気づかされました。

パネルを組んでくださった共同研究のみなさま、また大会を組織してくださったみなさま、どうもありがとうございました。

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“Settler Colonialism of Foresters in Karafuto, a Subarctic Territory of the Japanese Empire,”
in panel “Panel Imperial forestry in the territorial expansion of Japan: Foresters, science, and management,” The Seventh Biennial Conference of Association for East Asian Environmental History (EAEH 2023), Korea Advanced Institute of Science and Technology (KAIST) and Institute for Basic Science (IBS) in Daejeon, South Korea (by movie), June 30, 2023.
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