Archive for 2015年7月

戦後70年のもうひとつの課題

戦後70年ということで、研究者の間では当事者の高齢化に伴いインタビュー調査の時間的限界への危機意識が共有されておりますが、それは同時に個人が所蔵している民間資料保存の時間的限界でもあるということを、地域研図書室エッセイに書かせていただきました。

思えば「エッセイ」と名の付くものを書かせてもらったのは、初めてかもしれません。

民間資料の収集保存には今後も知恵を絞り努力していきたいと思っております。

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「戦後70年のもうひとつの課題:民間資料の収集と保存をめぐって」
京都大学地域研究統合情報センター図書室エッセイ(http://www.cias.kyoto-u.ac.jp/library/essay/)、2015年7月30日。
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高校生のみなさんへ 京都大学サマースクール2015

京都大学の高大連携事業の一環として「京都大学サマースクール2015」が来月8月20日に行われます。
私もそこで、下記の模擬授業を行わせていただきます。

「国境が変わると何が変わるのか ― 平和を科学する」

京都大学と連携協定を結んでいる高校の方しか参加資格はないそうですが、連携校の方は進路指導の先生にぜひご相談ください。連携校では「夏、京大体験」と大きく縦書きされたポスターが張り出されていると思います。

19世紀以降、5度も境界(国境)が変動したサハリン島を事例に、戦争によって境界が変わることで地元社会がいかに変化したのかについてお話しする予定です。

戦時中の被害経験については、テレビや映画、書籍などでよく見聞きしているかもしれませんが、「国境が変わると何が変わるのか」ということはあまり知られていないと思います。

人文社会科学(いわゆる「文系」学問)が平和の維持に貢献できる学問であるということ、そしてひとりひとりが大学で何を学ぶことができ、何をすることができるのかということを模擬授業を通して高校生のみなさんと考えていきたいと思います。

みなさんの受講を楽しみにしております。

*後日記:模擬授業の質疑応答については、本Blogで順次公開していきます。今のところ、下記のものが公開済みです。

質問その1 (2015年8月21日)
政治に“熱意”のある人ほどより多くの投票権を与えられてもいいのではないでしょうか?

質問その2 (2015年8月22日)
「故郷」の定義は何ですか?
「故郷」は主観的なものなので、科学的分析にはなじまないのではないですか?

質問その3(2015年8月23日)
“脱国益”思考では日本は損をするだけではないでしょうか? ほか

質問その4(2015年8月25日)
農学部で学んだことは今の研究に活かされていますか?

質問その5(2015年9月1日)
安保法案に関する分析のための資料はどんなものがありますか? ほか

質問その6(2015年9月8日)
「平和」の定義は何ですか?

『亜寒帯植民地樺太』書評・引用、論文ネット公開

拙著『亜寒帯植民地樺太の移民社会形成』について以下の書評と紹介が最近出ました。

出村文理「中山大将著『亜寒帯植民地樺太の移民社会形成』」『北海道史研究協議会 会報』第96号、2015年

三木理史「書評 中山大将著『亜寒帯植民地樺太の移民社会形成-周縁的ナショナル・アイデンティティーと植民地イデオロギー』」『日本歴史』第804号(2015年5月号)。

それから、下記の論考で拙著を引用してくださっております。

松村正直「樺太を訪れた歌人たち 土岐善麿と樺太文化(2)」『短歌往来』第26巻7号、2014年

1939年に樺太を訪れた歌人・土岐善麿が地元の知識人と交流して得た樺太文化への感想は、まさに拙著で分析した樺太文化論を反映させたものでした。拙著では樺太の外からの目というものをあまり論じていなかったので、こうした事例を紹介していただけるとたいへんうれしく思います。

さて、いまに始まったことではないのですが、下記の論文がネット上で公開されております。
一部は有料サービスとなっているので、利用条件などをご確認ください。

「周縁におけるナショナル・アイデンティティの再生産と自然環境的差異―樺太米食撤廃論の展開と政治・文化エリート」
『ソシオロジ』第163号、2008年10月31日、55-72頁。
( DOI: http://doi.org/10.14959/soshioroji.53.2_55

「樺太植民地農政の中の近代天皇制―樺太篤農家事業と昭和の大礼の関係を中心にして―」
『村落社会研究ジャーナル』第16巻第1号(通号31号)、2009年10月31日、1-12頁。
( DOI: http://doi.org/10.9747/jars.16.1_1

「樺太庁中央試験所の技術と思想―1930年代樺太拓殖における帝国の科学―」
『農業史研究』第45号、2011年3月、53-64頁。
(CiNii PDF)

「総力戦体制と樺太庁中央試験所―1937年以降の樺太植民地社会における帝国の科学―」
『農業史研究』第47号、2013年3月、70-81頁。
(CiNii PDF)

「サハリン韓人の下からの共生の模索―樺太・サハリン・韓国を生きた樺太移住韓人第二世代を中心に」
『境界研究』第5号、2015年3月4日、1-27頁。
http://src-h.slav.hokudai.ac.jp/publictn/JapanBorderReview/no5/pdf/01.pdf

京都大学の学生さんのみなさんへ

京都大学が学生と教員をつなげるための「問答」というサービスを始めました。
自分の知りたい分野や事柄のキーワードで検索すると、それに該当する教員が表示され、その教員との面会や連絡を申し込めるというものです。

学内約2,800人の教員のうち本日段階で登録している教員は50数名ですので、まだまだ少ないですね。京大のHPでは、学生約28,000人に教員約2,800人、学生10人に教員1人と書いておりますが、実際には私のように講義を持っていない教員もおりますので、学生さんにはこうした機会を利用して、京大という環境を存分に活かして欲しいと思います。

ただ、学生さんの語彙と教員が登録する研究キーワードにはズレがあるかもしれないなと思っております。

京都大学 問答 mondo 学問に熱心な京大生のための対話場あっせん
https://mondo.cpier.kyoto-u.ac.jp

ASCJでパネル報告。

ASCJ (Asian Studies Conference Japan)でパネル報告を行ってまいりました。
パネル・テーマが、戦後へ移行と越境いうことだったので、樺太庁中央試験所の技師たちの戦前戦後について論じました。

人物論に陥らないようにいかに一般化を行いながら議論するかは難しい問題でしたが、参加者のみなさんからも関心をもっていただけたようで何よりでした。

戦後日本社会内部や海外への開発プロジェクトについてもっとしっかりとした知識がないと、技師たちの戦後も把握しきれないという新たな課題にも気づかされました。

樺太のケースが面白いのは、〈戦後〉においてもあらゆる面で北海道と強い結びつきがあることだと今回の報告で改めて発見しました。

今後も英語で自身や日本の学界の研究成果を発信していければと思っております。

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“Where have the Subarctic Engineers of Karafuto Gone?: Engineers at the Saghalien Central Experiment Station in the Postwar,”
Session 22: Postwar Transitions across New Borders: Economic and Political Activities of Repatriates in Postwar Japan (Organizer/Chair: Jonathan Bull, Hokkaido University),
The Nineteenth Asian Studies Conference Japan (ASCJ), June 20, 2015, Meiji Gakuin University, Japan.
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