Archive for 2015年11月

樺太旧住民の戦後4年間

ロシア連邦サハリン州文化局のサヴェーリエヴァ氏が2012年にお書きになったサハリンとクリルの戦後史に関する研究書の翻訳書が刊行されました。翻訳は小山内道子さんです。原書は以下です。

Савельева, Елена Ивановна., От войны и миру: гражданское управление на Южном Сахалине и Курильских островах 1945-1947 гг, Сахалин: Министерство культуры Сахалинской области, 2012.

「樺太」「千島」が「サハリン州」へと成って行く1945年から1947年にかけての過程をソ連側の資料から描いた貴重な翻訳書となります。

この期間についての日本語でのまとまった記述としては、『樺太終戦史』(全国樺太連盟、1973年)など日本側の視点のものしかありませんでしたから、この本が日本側の記述とロシア(ソ連)側の記述の比較が広く行われることに役立つよう期待しておりします。

今後はこれが、サハリン(ロシア)側のこの時代に対する歴史認識の土台となるかと思いますので、その意味でも重要な翻訳です。もちろん、検証が必要とは言え、その検証作業を広く行うための材料が日ロで共有できたことは大きな意味があると思います。

私も解題として、樺太で暮らした人々が引揚げまでの間に何を経験したのかを3人の日本人・朝鮮人住民の回想記を引用しながら描き出す文章を書かさせていただきました。

主に引用したのは3人の回想記だけですが、他の方の回想記や聞き取りからも大きく外れた戦後〈樺太〉像にはなっていないと思います。

ただ、紙幅の関係もあり住民の戦争・被害経験についてはほとんど触れておりません。本編自体もサハリン戦に関する記述を主眼とはしていないので、今後そうしたテーマの翻訳書が出た時には、またそのテーマに沿った文章を同様に書かせてもらえればと願っております。

出版社のHPはこちら、広告・注文書はこちらです。

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「旧住民から見たサハリン島の戦後四年間」
エレーナ・サヴェーリエヴァ著(小山内道子翻訳、サハリン・樺太史研究会監修)『日本領樺太・千島からソ連領サハリン州へ―一九四五年-一九四七年』成文社、2015年11月25日、156-177頁。
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The Japan News と Wikipedia

読売新聞が発行している英字新聞The Japan Newsに、取材協力をした記事が掲載されました。
内容としては、10月3日の記事の翻訳となります。

ところで、Wikipediaの「引き揚げ」ページの本文中に、今年8月15日の朝日新聞記事が引用される形で名前が出ました。Wikipedia上に自分の名前が出たのは初めてのことだと思うので、自分の研究がネット上の情報流通にも貢献できたようでうれしく思いました。

その一方で、そこで引用されている内容は数年前から論文で書いていることでもあったので、改めて新聞などの大手メディアの影響力や、学界の最新成果が一般社会へ入り込むには時間差があることを痛感しました。

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取材協力 “Sakhalin Japanese mark 25 yrs of renewed ties,”
The Japan News, October 21, 2015, p3.
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