樺太旧住民の戦後4年間
ロシア連邦サハリン州文化局のサヴェーリエヴァ氏が2012年にお書きになったサハリンとクリルの戦後史に関する研究書の翻訳書が刊行されました。翻訳は小山内道子さんです。原書は以下です。
Савельева, Елена Ивановна., От войны и миру: гражданское управление на Южном Сахалине и Курильских островах 1945-1947 гг, Сахалин: Министерство культуры Сахалинской области, 2012.
「樺太」「千島」が「サハリン州」へと成って行く1945年から1947年にかけての過程をソ連側の資料から描いた貴重な翻訳書となります。
この期間についての日本語でのまとまった記述としては、『樺太終戦史』(全国樺太連盟、1973年)など日本側の視点のものしかありませんでしたから、この本が日本側の記述とロシア(ソ連)側の記述の比較が広く行われることに役立つよう期待しておりします。
今後はこれが、サハリン(ロシア)側のこの時代に対する歴史認識の土台となるかと思いますので、その意味でも重要な翻訳です。もちろん、検証が必要とは言え、その検証作業を広く行うための材料が日ロで共有できたことは大きな意味があると思います。
私も解題として、樺太で暮らした人々が引揚げまでの間に何を経験したのかを3人の日本人・朝鮮人住民の回想記を引用しながら描き出す文章を書かさせていただきました。
主に引用したのは3人の回想記だけですが、他の方の回想記や聞き取りからも大きく外れた戦後〈樺太〉像にはなっていないと思います。
ただ、紙幅の関係もあり住民の戦争・被害経験についてはほとんど触れておりません。本編自体もサハリン戦に関する記述を主眼とはしていないので、今後そうしたテーマの翻訳書が出た時には、またそのテーマに沿った文章を同様に書かせてもらえればと願っております。
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「旧住民から見たサハリン島の戦後四年間」
エレーナ・サヴェーリエヴァ著(小山内道子翻訳、サハリン・樺太史研究会監修)『日本領樺太・千島からソ連領サハリン州へ―一九四五年-一九四七年』成文社、2015年11月25日、156-177頁。
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