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樺太華僑の不本意な帰国についての論文を刊行。

長らく携わりながらなかなか論文化できなかった樺太華僑の戦後の動向に関する研究がようやく論文として刊行されました。

華僑華人研究というと一分野として確立しており、門外漢が論文を書くことは敷居が高いことなのですが、それでも書いてみて、華僑華人研究者ではなくサハリン樺太史研究者だからこそ書けたこともあったと思っております。

もちろん、研究と執筆の過程では、華僑華人史関連の研究会で発表させていただき適切なご指摘や温かい励ましのお言葉をいただいたり、個別にも多くのご支援やご協力をいただけたがゆえに、本論文が成就したのは紛れもない事実であり、ご協力いただいたみなさまには心より感謝を申し上げます。

最初は、そう言えば樺太にいた華僑は戦後にどうなったのだろう、という関心からこの研究は始まったのですが、資料を見つけ論を組むうちに、戦勝国民でありなおかつ戦勝国に住んでいる華僑(中華民国人)も〈不本意な移動〉を経験しているということに気付きました。

引揚げ・残留研究はどうしても敗戦国民に関心が向いてしまいますが、境界変動が住民に与える影響を考える上では、見過ごしてはいけないことを改めて認識しました。

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「日ソ戦後の在南サハリン中華民国人の帰国:境界変動による樺太華僑の不本意な移動」
『境界研究』第10号、2020年3月31日、45-69頁。
本文 http://src-h.slav.hokudai.ac.jp/publictn/JapanBorderReview/no10/PDF/03.pdf 
Summary http://src-h.slav.hokudai.ac.jp/publictn/JapanBorderReview/no10/PDF/10Summary.pdf
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「世界におけるサハリン樺太史研究」特集記事

2018年12月に行なったサハリン樺太史研究会10周年シンポジウム「世界におけるサハリン樺太史研究」の報告論文が『北方人文研究』第13号に掲載され、Web上でも全文が公開されました。

HUSCAP(北海道大学学術成果コレクション)
https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/handle/2115/77237

関連記事は以下の通りです。

中山大将「サハリン樺太史研究会10周年シンポジウム「世界におけるサハリン樺太史研究」」
東俊佑「日本における前近代サハリン・樺太史研究の動向:1264-1867」
竹野学「日本における近代サハリン・樺太史研究の動向その1:政治・外交・軍事・経済」
池田裕子「日本における近代サハリン・樺太史研究の動向その2:社会・文化」
ディン ユリア「ポストソ連期ロシアにおけるサハリンおよびクリルの主要な歴史研究」
韓恵仁「韓国におけるサハリン関連研究状況と関連史料について」
ブル ジョナサン「近年の英語圏のサハリン/樺太史研究」
中山大将「中国語圏におけるサハリン樺太史研究:庫頁島中国固有領土論・山丹貿易・日本帝国植民地」
中山大将「サハリン/樺太史研究DB(データベース)について:個人作成資料目録の統合と活用」

日本植民地研究会編『日本植民地研究の論点』(岩波書店、2018年)では、この10年間における量・質両面での進展が完全に黙殺されたサハリン・樺太史研究ですが、本特集記事によって、サハリン樺太史研究会発足後のこの10年間で、日本語圏に限らず、ロシア語圏、韓国語圏、英語圏、中国語圏でどのような研究が生まれ何が議論されたのかが広く知られる機会を得ることができました。

この企画のために尽力してくださった執筆者のみなさんはもちろん、こうした発表の場を作ってくださったサハリン樺太史研究会のみなさま、北海道大学北方研究教育センターのみなさまに心より感謝いたします。

地域研究コンソーシアム登竜賞を受賞しました。

昨年の11月に「第9回 地域研究コンソーシアム登竜賞」を受賞しました。
http://www.jcas.jp/about/awards.html
対象は、拙著『サハリン残留日本人と戦後日本』(国際書院、2019年)です(要旨)。

地域研究コンソーシアム(JCAS)は100を越える日本国内の地域研究機関・学術団体の集まりですので、そこでこのような賞を得られたことは、研究者としてたいへん光栄なことです。

その一方で複雑な気持ちになるのは、そもそもサハリン残留日本人が発生していなければ、私の研究も拙著も受賞もなかったわけですから、素直に喜ぶことはできないということです。

ただ、そのことを思ったときに、歴史研究とはやはり〈未来〉のためにあるのだと改めて思います。〈国境と国民の時代〉が続く限り、同様の現象が起きる可能性が常に存在しています。その発生を防ぐためにはどうずればいいのか、それを考えるために私の研究と拙著がみなさんの役に立てばと願いますし、この受賞が多くの方に〈残留〉や〈境界変動〉に関心を持っていただく契機になることを望みます。

調査に惜しみない協力をしてくださった日本サハリン同胞交流協会およびその後継である日本サハリン協会のみなさま、北海道中国帰国者支援・交流センターのみなさま、引揚者団体である全国樺太連盟のみなさま、日ロ韓の残留者、帰国者、引揚者、そのご家族ご親族、関係者のみなさまの協力無くしては、本書は成りませんでした。心より御礼申し上げます。

また、私がサハリン残留日本人についての研究を行なったこの10年近くは、サハリン樺太史研究会が発足し急激にサハリン樺太史研究が進んだ10年でもありました。研究会のみなさんや、研究会とは別に私に共同研究の場を与えてくれたみなさんにも感謝いたします。

出版の機会と研究に専念できる機会を与えてくださった旧・京都大学地域研究統合情報センター(現・東南アジア地域研究研究所)のみなさま、また日本学術振興会特別研究員として3年間過ごし私の研究の視野を大きく広げてくれた北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターのみなさまにも御礼申し上げます。

家族、友人と御礼の相手を上げていくときりがなく、ひとりひとりのお名前を挙げることはしませんが、この場を借りてみなさまのご協力への御礼を申し上げます。

漫画『ゴールデンカムイ』や小説『熱源』などでもサハリン島は題材になり世間の関心もいくらかは得られるようになっておりますが、こうした創作作品にも我々研究者の研究成果が活かされていくことを願うばかりです。

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第9回地域研究コンソーシアム登竜賞(『サハリン残留日本人と戦後日本』国際書院、2019年)、2019年11月2日
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ドキュメンタリー映画『まだ何も知らない君へ』の公開に際して

日本映画大学の学生が製作したドキュメンタリー映画『まだ何も知らない君へ』が2020年2月9日に日本映画大学卒業制作上映会で公開されるそうです。

日本映画大学卒業制作上映会:https://www.eiga.ac.jp/sotsusei/jimi06/index.php

まだ観ていない作品をとりあげるのは、この撮影班がサハリン樺太史研究会を取材してくれていて、そのために「協力」に研究会の名前を入れてくれていることと、参考資料として拙著『サハリン残留日本人と戦後日本』(清水書院、2019年)を挙げてくれていることをうれしく思ったからです。

映像関係の歴史モノでは、研究者に協力を仰いだり、既存の研究を参照したにもかかわらず、研究者や出典の名前を挙げず、まるであたかも自分たちがすべて〈発見〉したかのような演出をする製作者が多い現況があり、研究者たちの中で問題視されています。

そうした中で、こうした真摯な姿勢はたいへんうれしく、もし今後も映像関係のお仕事を続けていくなら、この真摯さを失ってほしくないと切に願います。

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協力 映画『まだ何も知らない君へ』制作・監督:平野武周、企画:池田大道、2020年。
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サハリンの歴史、樺太の歴史から考える〈国境〉 新聞に拙著紹介記事

1月5日の『釧路新聞』に拙著『国境は誰のためにある?:境界地域サハリン・樺太』(清水書院)の紹介記事を掲載していただきました。研究者の書いたものをこうして大きくとりあげていただけるのはたいへんありがたいことです。

大学の警備員さんから記事見ましたとよと言われたり、学生さんから家族に自慢しましたよと教えてもらったりすると、やはり新聞記事というのは、一般社会と研究の間を縮めてくれるものだと実感します。

地元紙ですので、他地域の方には読むのが難しいかと思いますが、出版社の清水書院さんが新聞社の了解のもと、記事画像をtwitterにアップしてくれていますので、ご関心のある方はご覧ください。

清水書院twitter
https://twitter.com/shimizushoinweb/status/1216888611305426944

また同社twitterの別tweet(2019年1月16日付)では、第162回直木賞受賞作・川越宗一『熱源』(文芸春秋、2019年)に出てくる登場人物の一部が拙著でも紹介されていることを書いてくれています。

同作をきっかけに小説・文学の題材としてのサハリン・樺太にとどまらず〈歴史(=人類の経験)〉としてのサハリン・樺太史へ関心を拡げてくれる方々が増えることを期待します。

また、拙著は、内容・分量的にも、また価格的にも、まずはサハリン・樺太の歴史の概要を知りたいという人には最適の本ではないかと思います。誠に勝手ながら、同じ関心・問題意識を同じ題材を基に、同作著者は文学という形で、私は歴史研究という形で追究しているのではないかと思っております(ちなみに、経歴を見る限り、年も近く同じ時期に京都で暮らしていたことがあるようです)。

なお、サハリン・樺太の先住民族にご関心を持たれた方には、とにかく拙著でも参照している田村将人さん(国立アイヌ民族博物館)の諸論文がおすすめです。ピウスツキについては、拙著と同じく昨年12月に沢田和彦先生の『ブロニスワフ・ピウスツキ伝』(成文社、2019年)が刊行されていますので、ご関心のある方はぜひ手を伸ばしてみてください。

その他、サハリン・樺太史に関する研究書は以下のサイトに(ほぼ)新しいものの順に整理されていますので、参考にしてください。

サハリン樺太史研究会Webサイト:http://sakhalinkarafutohistory.com/new.html

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伊東義晃「国境は何か考えて 釧路公立大講師・中山さん 高校「歴史総合」副読本を出版」
『釧路新聞』2020年1月5日、14面。
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第三単著刊行 『国境は誰のためにある?』

2022年度から高校教育で導入される予定の科目「歴史総合」に向けて教科書会社の清水書院さんが刊行している「歴史総合パートナーズ」シリーズ第10巻として下記の拙著が出版されました。

「歴史総合」は従来の科目「日本史」「世界史」の垣根をなくして歴史を学び考えることが目的ですから、拙著では〈国境〉を主題にしつつ、具体的事例として先住民族含めアジアとヨーロッパの諸集団諸国家の関係が入り組んで展開したサハリン島の歴史について論じました。

このシリーズの特徴はしっかりと注がついていることです。大学で教えていると、高校の教科書や通俗書と研究書の間をつないでくれるような本が意外に少ないということに気付きます。

本書もサハリン・樺太に興味はあるけど、専門の研究書はあまりに分厚くて難しいと思っている高校生や大学生、あるいは社会人のみなさんにとって手ごろなサハリン島通史としてもお役に立てるかと思います。

樺太農業史だけでもなく、サハリン残留日本人問題だけでもなく、サハリン島の通史ということで、自分でもかなり勉強し直しながら書きました。最新の研究成果を世に出していくことが研究者の重要な仕事ではあるものの、こうして先達たちの成果をとりまとめながら、高校生や大学生に向けて書くというのはとても楽しいことでした。

ありがたいことに30代で3冊の単著を書かさせていただきました。北大、京大、釧路公立大と3冊とも肩書が違うのもよい記念です。今後は機会さえあれば、サハリン残留日本人について一般向けの新書のようなものと、歴史と歴史研究の意義について論じた一般向けの本を書いてみたいなと思っております。

執筆にあたっては、現任校の釧路公立大学や京都大学、甲南女子大学での講義、北海道大学、東京大学での特別講義、北海道教育大学での教員免許更新講習、等々での経験や学生のみなさん、教員のみなさんの反応がたいへん参考になりました。ありがとうございました。

執筆中の原稿にコメントをくださったり、私からの問い合わせに適確な回答をくださった研究者のみなさんにもお礼を申し上げます。それから、草稿に目を通していただいたある樺太出身者の方がペンを持つのが難しくなったため覚えたてのタブレットからの入力で送ってくださった感想にたいへん勇気づけられたことも忘れられません。

また、この貴重な機会をお与えくださった清水書院さん、本シリーズの編集委員の諸先生にも改めて御礼申し上げます。

最後に、執筆のための時間を与えてくださった釧路公立大学の教員・職員のみなさま、執筆を支えてくれた家族にも最後にお礼を述べておきたいと思います。

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中山大将『歴史総合パートナーズ⑩ 国境は誰のためにある?:境界地域サハリン・樺太』
清水書院、2019年12月9日、総117頁。
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*出版社のWebサイト:http://www.shimizushoin.co.jp/tabid/89/pdid/840/Default.aspx
*なお、恥ずかしながら、20頁5行目末尾の「同」は正しくは「翌」ですので、ここで訂正しておきます。


 

釧路北陽高校と稚内大谷高校で講演

全国樺太連盟のお招きで、釧路北陽高校と稚内大谷高校で下記の講演をさせていただきました。

高校での講演ということで、大学の講義の模擬講義のようなつもりで講演いたしました。
あえて「サハリン島は誰のものか?」と問うことで見えてくる数多くの事柄について気付いてもらえれば幸いです。

両校の生徒さんとも、しっかり挨拶もでき、しっかりした態度で講演に臨んでいらっしゃり感心いたしました。北海道出身者としても、こういう若い方々が育っている現状にふれ、とてもうれしかったです。

おかげでたいへん楽しい時間をすごさせていただきました。
ただ、連絡の行き違いなどで、私の話は省略した部分が多く、この点はたいへん申し訳なく思いました。

企画と開催にかかわったみなさま、また熱心に講演に耳を傾けてくれた生徒のみなさまに感謝いたします。

まさに一期一会で高校生のみなさんに自分の研究やサハリン・樺太についてお話しするのはたいへん楽しいことなので、またどこかの高校からお声がかからないかと期待しております。

ところで、稚内の新聞では、私の講演について「領有権を巡って国家が対立してきた歴史を紹介した」と報道されており、道北在住の新聞記者でもあの話をそういう受け取り方をするのだなと、少し残念でした。「境界と住民の移動が繰り返された歴史を紹介した」みたいに書いてもらえるよう今後も心がけます。なお、私はあの場に報道機関の人間がいたことさえ記事を見るまで知らず、直接取材も無く新聞記事に名前を出されるのも初めてだったので少々驚きました。

なお、釧路では「樺太郷土史研究会」という団体に私が加わっているかのような発言があったように記憶しておりますが、私は当該団体には加入しておりません。その場で訂正する機会が無かったのでこの場で指摘しておきます。(私が参加しているのは、「サハリン樺太史研究会」です)

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「世界史から見るサハリン・樺太」樺太の歴史を考える高校生のシンポジウム(主催:全国樺太連盟)、北海道釧路北陽高等学校、2019年10月28日。

「世界史から見るサハリン・樺太」樺太の歴史を考える高校生のシンポジウム(主催:全国樺太連盟)、稚内大谷高等学校、2019年10月30日。

*上記に関する報道
伊東義晃「樺太の歴史考える 釧路北陽高釧路支部がシンポ」『釧路新聞』2019年10月29日、1面。

中野訓「「南樺太侵攻は理不尽」釧北陽高で歴史学シンポ」『北海道新聞(釧路版)』2019年10月29日、19面。

岩崎志帆「樺太の歴史次世代に 稚内大谷高でシンポ 専門家ら講演」『北海道新聞(留萌宗谷版)』2019年10月31日、17面。
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*追記(2019年11月2日)
以下の記事がネットにあることも後日知り合いから知らされました。
写真を撮っていたのは、高校の先生ではなく報道の方だったのですね。
なお、記事本文中の「24万人」は正しくは「240万人」です(口頭とPPTでは正しい数字をお伝えしておりましたが、配布資料では誤記のままだったので仕方ありません)。

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「樺太の歴史に触れる 全国樺太連盟が大谷高でシンポ」『稚内プレス』2019年10月31日
http://wakkanaipress.com/2019/10/31/41978
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