Japanese Society on Karafuto, in ed. Svetlana Paichadze, Philip A. Seaton, Voices from the Shifting Russo-Japanese Border: Karafuto / Sakhalin, Oxon: Routledge, 2015.

本稿は、日本語圏のみならず、ロシア語圏、韓国語圏、英語圏のサハリン島史研究者11名による英語論文集において応募者が執筆した第1章であり、樺太(1905-45年にかけて日本領であったサハリン島南部)の歴史の概略を示すことが目的である。樺太史について英語で発信した例としては、サハリン島史の一部分として論述されたJ. Stephan, Sakhalin a History(Oxford University Press, 1971)があるものの、本稿は2000年代以降に活発となった樺太史研究の成果をふまえた上で日本の樺太史研究者が初めて英語で発信した樺太概史としての意義がある。英語圏での引用例としては、イギリスのthe University of Leicesterの研究者によるCarrie Crockett, “Forced Labour and Shifting Borders”(Carceral Archipelago, University of Leicester, January 10, 2016)などがある。

本稿は、日露雑居の合意がなされた1855年の日露通好条約以降の近現代サハリン島をめぐる境界変動史を概説した上で、前半部分では日本領ではなかった北サハリンも含めて日本人移住者を中心に19-20世紀におけるサハリン島での移住者の動向全般について産業史の観点からまとめ、後半部分では、拙著『亜寒帯植民地樺太の移民社会形成』(京都大学学術出版会、2014年)を基に、単なる樺太の農業経済史だけではなく、農業拓殖に関連したイデオロギーやアイデンティティ問題について論じたほか、マイノリティ移住者である朝鮮人の樺太農林業における動向についても新たに論じた。

(掲載:2019年2月19日)

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